私共は、内外の優れた実務家とともに「日本の品位品格」を求め続けて参りました。特に李登輝元総統に代表する、日本を心から愛してくださる台湾の方々との交流こそ、私共の二つの会の基礎を形成してくださいました。中でも、本日の記念すべき日に、態々台湾からお出ましくださることになっておりました蔡焜燦先生ご夫妻こそ、我が会の「生みの親であり育ての親」なのです。先生の『台湾人と日本精神』において、自虐史観によって日本人が忘れかけていた「品位・品格ある日本文化・日本精神の再興」こそ、「日本が信頼を取り戻す道である」ことを実感させて下さいました。台湾の方々との交流を通して誠実に、真剣に「己とは何か」を求め続けなければならないと実感するに至りました。

そもそも、ここに改めて述べるまでもなく。十八世紀に西洋で整えられた近代の啓蒙思想は、科学的合理主義
を強力な柱にすえる一方で、それと裏腹な関係にある自律的個人主義を特異な色合いに染めて、世界を席巻していったのが十九世紀の世界史です。

二十世紀に入ると、この近代思想は、自己主張を助長して我欲と我欲の衝突を産み、国家間の覇権争いをもたらすなど「負の側面」を世界各地で表し始めました。神を引きずり落とし、歴史を空虚なものに叩き落して行く
近代思想の実像を目の当たりにした人々は、「貧困と飢餓を救う科学・技術」とか「汚らわしい歴史から人類を救う個人主義」とした全幅の信頼が、実は幻想であり、危険な要素を持った思想であることを体験し困惑したのです。

二十一世紀にはいっても「西洋近代思想という怪物」は、「人間の本質」であった繋がり、関わり合いを脆弱な
ものに変質させています。自分の意思と判断を絶対視し、神の座に着いたと錯覚した「近代人」は、「家庭、家族の繋がり」を破壊し、「慈愛と感謝の心」を人間から奪いとる暴挙を重ねているのです。

わが交流学会は、豊な自然と神々との繋がりを心の支えにしているモンスーン・アジアの人々との連携を深めて、「自重互敬」の精神の下、調和の取れた穏やかな社会の復興を模索するところに特色を求めています。

台湾人初の海軍大将・荘明耀閣下は、我々の活動を評価して「新しい知的活力は交流の中からうまれる」と話され、我が学会を「アジア太平洋交流学会」と銘銘してくださったのが二〇〇〇年四月のことです。

広い視野に立ってこそ豊な感受性も逞しい創造力も育成されるとの理念を基に、日本を中心に置きながらモ近隣諸国が直面している深刻な課題にも「我がこと」として心を寄せる努力を続けてまいりました。この思いを共有してくださる「日台の優れた研究者・実務家」が集って、毎月の例会のほかに、「アジアの近代化と儒学思想」(二〇〇三年四月)をはじめ「日台科学教育の今後」(二〇〇三年十一月)「アジア的価値を求めて」(二〇〇五年十一月)「グローバル化と日台の未来」(二〇〇六年九月)その他、重要課題を日台双方の専門家が直接語り合い交流を深めました。

さて、アジア太平洋交流学会創立十五周年、そして修学院がNPO法人格を取得して十周年の記念すべき節目を迎え、改めて、感謝の気持ちをもって歴史を振り返り、さらに大きく飛躍する決意を新たに致しました。

今後とも、末永く、アジア太平洋交流学会及びNPO法人・修学院をご支援下さいますようお願いいたしまして、会長の挨拶と致します。